「なぜ、社会課題に取り組む企業の求人」が増えているのか？

社会の価値観とステークホルダーの期待の変化

現代社会では、企業に対する期待が大きく変化しています。

かつては株主利益の最大化が企業の主な目的とされていましたが、近年では「ステークホルダー資本主義」や「ESG（環境・社会・ガバナンス）」の観点が重視されるようになりました。

消費者、投資家、従業員、政府など、企業を取り巻くすべてのステークホルダーが、企業に対して社会的責任を果たすことを求めるようになっています。

特に、20代から40代の若い世代、つまりミレニアル世代やZ世代の消費者は、単に価格や品質だけでなく、企業の倫理的な姿勢や社会貢献度を重視する傾向があります。

この世代は、自分が支持する企業やブランドが社会課題に取り組んでいるかどうかを購入の判断基準にすることが多く、企業の価値観が自身の価値観と一致することを求める傾向が強いです。

また、消費者庁の調査によると、年代を問わずエシカル消費（倫理的消費）への関心が高まり、実践する人の割合も増加傾向にあることが報告されています。

テクノロジーの進歩

ソーシャルビジネスが増加する背景の一つに、技術の進歩があります。
以前は、社会課題を解決するためのアイデアがあっても、実現には莫大な費用や時間がかかることが課題でした。

しかし、インターネットやスマートフォン、AI（人工知能）といった技術が進化したことで、少ないコストで大きな効果を生み出すことが可能になっています。

例えば、貧困地域に教育を届けることを目指す企業を考えてみましょう。
従来は学校を建設したり、教師を派遣したりするのに膨大な費用が必要でした。

しかし現在では、スマートフォンやオンライン授業ツールを活用することで、遠隔地に住む子どもたちにも低コストで教育を提供することができます。

このような技術の進化は、教育だけでなく、医療や環境問題などさまざまな分野で応用されており、社会課題を解決しつつ利益を上げるビジネスモデルの実現を後押ししています。

資金調達の多様化

資金調達の多様化も、ソーシャルビジネス企業が増加する重要な要因です。
以下に、代表的な資金調達の方法を詳しく解説します。

1. インパクト投資の拡大

インパクト投資とは、利益を追求するだけでなく、社会や環境に良い影響を与える企業に資金を提供する新しい投資の形です。

Global Impact Investing Network (GIIN) の2022年の調査によると、インパクト投資の市場規模は世界で約1.16兆ドル（約170兆円）に達しており、毎年拡大しています。

この仕組みにより、社会課題に取り組む企業が資金を集めやすい環境が整っています。

2. クラウドファンディングの普及

クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組みです。

ソーシャルビジネスは「共感できる目的」を持つことが多いため、一般の人々が「応援したい」と感じて支援するケースが増えています。

日本では「READYFOR」や「CAMPFIRE」といったプラットフォームが人気で、環境に優しい商品や地域活性化を目指すプロジェクトが多くの資金を集めています。

2022年の矢野経済研究所の調査によると、日本のクラウドファンディング市場規模は約1600億円を超えています。

3. 政府や公的機関からの資金支援

政府や公的機関も、社会課題解決を目指す企業への支援を増やしています。

経済産業省は、社会課題解決と経済成長の実現のためにスタートアップ企業への支援を充実させています。

また、日本政策金融公庫は、ソーシャルビジネス向けの特別融資制度を設け、低金利で資金を提供しています。

4. ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の関心の高まり

ベンチャーキャピタル（VC）やエンジェル投資家が、社会課題解決型の企業に注目し始めています。

日本のベンチャーキャピタル協会の報告によると、スタートアップへの投資額は2023年度に前年割れだったものの中期で見ると経年的に増加しています。

このような動きは、ソーシャルビジネスの拡大を支える重要な要素となっています。

5. ESG投資のトレンド

ESG投資（環境・社会・企業統治を重視する投資）は、ソーシャルビジネスの増加を後押ししています。

世界的に、ESG投資の市場規模は2022年時点で約35兆ドル（約5000兆円）に達しており、日本でも年金基金や大手投資機関がESGを重視する動きが見られます。