職務経歴書の作成や面接対策を、AIを使いながら進める。そんな転職活動が、ここ数年で身近になってきました。また、12月のボーナス支給後から翌年春の入社に向け、転職を検討し始める方も増える季節になりました。これから転職を考える方にとって、AIはどんな存在になるのでしょうか。今回は、20年近く転職支援に携わってきた私の目線から、AI時代の転職と、社会課題領域の転職市場の「いま」についてお話しします。
■AIが整えてくれるのは「書き方」まで
手間のかかる職務経歴書の作成負担が軽くなり、転職活動を前向きに進められる方が増えました。これは、とてもよい流れだと思っています。ただ、AIが文章を整えてくれても、その内容をご自身の言葉で語れるかどうかは別の話です。
面接では、これまでの仕事にどう向き合ってきたか、どんな経験を重ねてきたかが問われます。これはソーシャルグッドな転職に限らず、一般的な転職でも同じです。書類を整えたあとに大切なのは、その内容をどれだけ「自分の言葉で語れるか」だと思います。
■AI面接が広がっても、「人」が間に入る意味
企業の採用活動でも、AIによるスカウトや面接が使われ始めています。新卒採用など、多くの応募者から一定の要件に合う人を選ぶ場面では、効率のよい方法でしょう。一方、私たちがご支援しているのは、社会を前に進めるソーシャルビジネスの中心的な担い手となる方々です。
企業の中核を担うような人材採用では、スキルや経歴だけでなく、仕事への向き合い方や価値観など、一人ひとりに合わせた丁寧な対話が欠かせません。優秀で引く手あまたの方々にとって、AI面接だけで判断されることは、かえってその企業への志望度を下げる要因になるかもしれません。
いっぽう企業側も、求める仕事内容、スキル、人柄が異なりますし、経営状況も刻々と変わります。だからこそ、企業のことを深く知り、一人ひとりの経験や希望を丁寧に伺いながら、そのつど柔軟に対応できる「人」の役割が大切なのだと思っています。
もう一つ、人が間に入ることで生まれる価値があります。
それは、「ご本人も気づいていなかった可能性が見つけられる」です。
以前、「東京でしか働けない」とおっしゃっていた方に、広島の仕事をご紹介したことがありました。その方は、新たな可能性を見いだし、最終的には広島への移住を決められました。最初の希望条件だけで判断していたら、出会えなかった仕事です。
プロビティをご利用いただいた方からは、「自分では見つけられなかった求人に出会えた」「条件だけでなく、思いを聞いてもらえた」といった声をいただきます。AIを使いこなす方ほど、自分だけでは得られない情報や、第三者のプロの視点を求めていらっしゃるのだと日々感じています。
今後も一人ひとりに寄り添う、オーダーメイドの転職支援を大切にしていきたいと思っています。
■社会課題領域の転職市場は、いま前向きに動いている
「社会のための仕事は、年収が下がるのでは」。そんな心配も、少しずつ変わりつつあります。資金調達が進み、人材確保のために、給与水準を引き上げるスタートアップが増えています。最近では非営利組織から年収800万円程度の求人をいただくことも出てきました。
もちろん、もともとの年収が非常に高い方など、転職によって収入が下がるケースもあります。ただ、私たちが扱う求人を見る限り、社会課題領域だからといって、大幅な年収ダウンが当たり前という状況ではなくなってきています。
では、入社後に早く活躍できるのは、どのような方でしょうか。
私は、「変化や違いを楽しめる人」だと思っています。
ソーシャルな仕事は、未来を自分たちでつくっていく仕事です。リソースが足りなくても、前職と仕事の進め方が違っても、「こうだったらいいな」を仲間と一緒につくっていける方は、力を発揮しやすいと感じています。
一方で、「前職の大企業ではこうだったから」という考え方にとらわれてしまうと、新しい環境になじむことが難しくなる場合もあります。転職先には、その企業ならではの事情や、仕事の進め方があるはずです。まずはその違いを理解し、自分に何ができるのかを考えてみる。そうした姿勢が、新しい職場で活躍するための大切な一歩になるのだと思います。
■20代・30代の方へ、次の一歩をご一緒に
最近は、自分の思いや考えを言葉にする力が高く、驚くほど成熟した20代・30代の方にお会いすることが増えました。そうした若い世代の方々とも、もっと早い段階からキャリアについて一緒に考えていけたらと思っています。
「自分はどんな仕事で、社会とつながりたいのか」
すぐに答えが見つからなくても構いません。AIを上手に使いながら、ときには人との対話を通じて、自分でも気づかなかった可能性に出会う。
「社会によくて、自分にもよい」キャリアを、私たちと一緒に探していけたら、うれしく思います。

