対談「テクノロジーと『人』をつなげる」
2022.05.13 お知らせ社会をより良くしていこうというソーシャルグッド志向の企業と、社会的な意義・理念を持つ会社で働きたい優秀な人材をつなぐ「Green Greenキャリアプラットフォーム」。代表の高藤が企業の経営者をお招きして対談する企画として、今回は、とことん「人」を大切にした経営や事業展開を行っている 株式会社ストリートスマートの代表取締役社長 松林大輔氏にお話を伺いました。
テクノロジーと「人」をつなげる
ーー高藤
今日はよろしくお願い致します。
はじめに、ストリートスマートについてご紹介いただけますでしょうか?
ーー松林社長
ストリートスマートは主に Google Cloud の導入支援や活用支援を展開しています。企業や学校、行政等に、Google Workspace や Google for Education の導入から、研修やトレーニング、さらには分析やコンサルティングまで、さまざまなサービスをご提供しています。
Google から見ると、いわゆるカスタマーサクセスの部分を弊社が特化して行っているようなイメージです。
ーー高藤
Saasの企業などでも、近年はカスタマーサクセスの重要性が注目されていますものね。
会社としては、どのようなミッションで事業を展開されていますか?
ーー松林社長
弊社のミッションは「テクノロジーと『人』をつなげる」です。テクノロジーはすごいスピードで進化しています。でも、テクノロジーを使いこなしている人ばかりではありません。
そういった方々にもテクノロジーを活用して頂けるように、お手伝いをする。テクノロジーと人をつなげ、活用を促進し、さまざまな可能性を広げていきたいと思っています。
ーー高藤
ストリートスマートは Google のアワードをいくつも受賞しています。国内シェアはかなり高いようですが、いかがでしょう?
ーー松林社長
Google Workspace でいうと、導入支援ではかなりの規模で、なんらかのサービスで弊社が関わっているのではと思います。
導入支援などを行った企業は3,000社以上になります。教育機関における導入では、数万人単位で先生方の研修を行っており、研修先は44都道府県で開催した実績があります。
ーー高藤
ほとんど全国での実施になりますね。
ーー松林社長
Google だけでなく、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のさまざまなテクノロジーを活用できるような研究も行っていますし、さらに領域を広げていこうとしています。
とはいえ、現在、弊社は約50名の社員と20数名の業務委託がいる体制なので、今後は100名とか200名になることを見越して積極的に人材を採用したいと考えています。
急成長は求めていない「年輪経営」が理想
ーー高藤
社員も増え、それだけ事業が伸びていると、上場も視野に入れているのでしょうか?
ーー松林社長
上場をめざす・めざさないというより、上場を目的としていません。僕個人の考えとして、事業を優先するのではなく、組織を優先したいのです。組織のひとりひとりの成長がもっとも大切です。事業の成長を最優先にすると、ついていけなくなる人はやめてもらうとか、痛みを伴います。これは避けたい。
ただ、意固地になって上場しないというのでもありません。手段の目的化は避けたいけれど、上場企業と同じレベルで管理体制などの部分は整えていこうと思っています。
ーー高藤
事業の成長が最優先ではなく、人の成長を優先したいとお考えなのですね。
ーー松林社長
長野県の伊那食品工業さんが「年輪経営」という言葉を使っていますが、まさに僕がめざしている経営です。急成長ではなく、大木が年輪を刻むように、少しずつ積み上げて会社を成長させたいですね。
ーー高藤
いつから、そのようなお考えをお持ちになったのでしょう?
ーー松林社長
前職はベンチャー企業の役員として上場を目指していましたが、数字が大事でした。実は僕も当時『数字がでないなら会社に来るな』くらいのことを口にしていました。高い数字を設定し、実際に達成もしていましたけど、そこに幸せがなかったんですね。僕の仕事はこれです!と誇りをもって言えないところがあった。
利益をあげることが正義と思っていたのですが、それは一面では正しいんですよ。利益がなかったら給料だって払えないわけですしね。ただ、かなり偏っていた。
それで、最終的に独立を選んだのですが、そのときに会社が、組織が、人が、みんながハッピーになる、三方良し以上に、八方良しの経営をしたいと思ったのです。
ちなみに前職の会社はその後、大きく方向転換をして、働きやすい良い会社になっています。
ーー高藤
なるほど、前職での経験が松林さんの意識を変えたわけですね。ストリートスマートは、そうなるといわゆる「大家族経営」みたいなイメージでしょうか?
ーー松林社長
少し違います。みんなが家族というと、かなりウェットですよね。ドライではないですが、ウェットとドライの中間くらいですね。
自分で判断でき自信をもってチャレンジする。どこでもやっていける自律する人材になってほしい、その思いがストリートスマート(※)という社名にも由来しています。自律と共生、両方がこれからの組織、経営では重要だと思っています。
※ストリートスマートとは
どのような環境であっても生き抜く知恵をもつ。自分の経験や体験から学び賢くなった人のこと。
ーー高藤
「自律する人材」についてもう少し聞かせて頂けますか?
ーー松林社長
僕らが扱っている Google Cloud みたいなテクノロジーによって、時間や場所の制限が外れます。オンライン会議もそうですし、テレワークでどこでも仕事ができるようになりましたよね。
テクノロジーによって選択肢が増え、たとえば働き方も自分で選べるようになる。自ら選ぶということは責任も伴いますし、自律する(自分の意思で動き、意義や目的を考えながら行動できる)ことにもつながります。
社内だけでなく、僕らが今、提供しているサービスを通じて、社会全体にストリートスマートな人材が増えるように貢献していきたいと思っています。
ストリートスマートが求める人材とは
ーー高藤
では、ここからもう少し詳しく、御社が求める人材についてお伺いしたいと思います。どのようなポジションで人材を求めていらっしゃるのでしょうか?
ーー松林社長
今、デジタルで活用促進するツールなども開発しているので、複数の事業部が立ち上がっており、それらの部長職を求めています。
ーー高藤
部長職の人材のイメージとしてどのような方になりますでしょうか?
ーー松林社長
僕らはガンガン売り込むようなプッシュ型ではなく、プル型(市場にアプローチをし顧客からの接触を待つ)の営業スタイルで事業を運営しています。パートナー企業とアライアンスを組んでいるので、事業の提携的なところで戦略を描ける人を求めています。
それからサポートメンバーのマネジメントですね。
サポートメンバーは女性が7割以上です。当社のメンバーは、感受性が豊かで機微があり、研修などでも良いサポートができるんですね。その辺りを理解して、マネジメントができる人だといいと思います。
事業や管理部門でも募集中です。
スキルありきではなく「お節介で世話焼きな人」を求めている
ーー高藤
事業部門はIT経験が必須ですか?
ーー松林社長
いいえ、IT経験は必須ではありません。
逆にITの知識がなく、入社してから学び、その学びの経験を活かして「まったくわからない人にもわかりやすく」サポートできるメリットがありますから、IT出身にはこだわっていません。
ーー高藤
なるほど。では、逆にこのような人は向いていないというのはありますでしょうか?
ーー松林社長
次々とクラウドツールが出てきて、テクノロジーが進化している中で、新しい概念を覚えるには柔軟性が必要です。
“従来のシステム”とか“やり方”に凝り固まっている、前に覚えたことや知識だけで仕事をするような人は難しいのかなとは思います。
ーー高藤
柔軟性があり、学ぶ意欲のあることがポイントですね。採用の際、面接ではどのあたりをご覧になっていますか?
ーー松林社長
実は僕は面接には参加していません。採用プロセスには入っていないんです。
ただ、大事にしているのは価値観があっているかどうか、です。ここ数年は毎年、20名弱採用していますが、価値観を重視しているので離職率は低いです。
ーー高藤
なるほど。価値観のフィットが大切なのですね。
では、具体的にどんなタイプが御社に向いていると思いますか?
ーー松林社長
お節介な人ですね。人に寄り添うサービスを提供できる、世話焼きタイプの人が合っているのではないでしょうか。
僕は、社内を見ていて「よくぞ、ここまで良い人ばかりが集まったな」と本当にいつも思うんです。ガツガツしている、ある意味、人を踏み台にしてものし上がろうみたいなタイプはストリートスマートの空気感に合わないかなと思います。
ーー高藤
社長自ら「いい人ばかりがいる!」と言葉にできるのは、とても素晴らしいですね。働き方としては、現在はやはりリモートが中心ですか?
ーー松林社長
コロナ禍においては、出社とリモートを併用した働き方を導入しています。リモート時にも部門長同士が雑談チャットをしたり、知恵袋的に相談できるチャットがあったり、コミュニケーションをとる工夫はしていますね。
DXを通じて働き方も社会も変えていきたい
ーー高藤
松林さんが代表理事をされている一般社団法人 at Will Work(アットウィルワーク)で働き方を変えていく啓蒙活動をされていると伺いました。こちらはどういった経緯で始められて、どのような活動をなさっているのでしょうか。
ーー松林社長
もともと知り合いが Womenwillをやっていたのですが、賛同して一緒にセミナーなどを行っていました。そこで意見交換をすると、知人は女性の働き方について、僕はITで働き方を変える、いろいろな働き方に対する考えや課題が出てきました。
そのうちに『働き方って全体的に変わっていかないといけないよね』という話になりました。そこで社団法人を作る動きになり、働き方の情報を集める総合的なプラットフォームを立ち上げました。
at Will Workでは「働き方を選択できる社会へ」というミッションを掲げて、カンファレンスやアワードを開催しています。収益を目的とはしていません。それが広く知られて、大臣が登壇したことなどもあって、ストリートスマートよりもat Will Workの活動の方が有名になってしまったようなところもあります(笑)
ーー高藤
ストリートスマートでも社員を大切にし、自由度の高い働き方を提案しています。働き方を松林社長は常に考えていらっしゃる印象ですね。
ーー松林社長
ええ、そうですね。自律する人材を作る、ひとりひとりの働き方を変えていく、良くしていくというのがもともと僕がやりたいことです。それが、ストリートスマートという社名にも現れています。
ーー高藤
松林さんのお話を伺っていると、「人」「働き方」そして「テクノロジー」という言葉が多く出てきます。
ーー松林社長
テクノロジーの可能性は大きいのに、使える人と使えない人で分かれてしまうのはもったいないと思うんです。
今、分断化といわれていますけど、要するにITリテラシーのギャップを埋めたいのです。みんながITツールを使いこなせるようになれるサービスを提供していく。社会全体がアップデートするように、僕らのサービスを通じて貢献をしたいと思っています。
ーー高藤
大衆的なDXですね。
ーー松林社長
まさにそうですね。
活動や目的によって、それに合わせたコンサルティングやサービスを提供したり、出版機能もあるので書籍にすることもできるし、eラーニングのようなコンテンツにすることもできる。情報提供をすることでDX化を浸透させ、社会全体をアップデートしたいと思っています。
会社は「箱」大事なのは中身である「人」
ーー高藤
御社で働きたい、興味があるという方に特に伝えたいことがありましたら、ぜひお聞かせください。
ーー松林社長
ストリートスマートは新しいサービス、新しいプロダクトをどんどん作り出していく。生み出すことに力を発揮できる会社です。
領域でいうと Google の活用なんですが、さまざまな分野があります。多種多様なサービスを生み出すことに関わりたい人、若い時から経験したいと思っている人にはチャンスがたくさんあるので、ストリートスマートは本当に向いていると思います。
それと、Google を知らない人は今やほとんどいません。弊社で働くことで、今後の中長期的なキャリア形成にも役立つスキルが身につくと思います。ストリートスマートからGoogleに転職した方もいるし、みなそれぞれキャリアアップしています。すごいですよね(笑)
ーー高藤
Googleに転職ですか!
ーー松林社長
コールセンターで働いていた方で、うちで働いて、それで Google に転籍しました。
僕はこういう転職を、たとえば企業のノウハウが流出するとか、せっかく育てたのにという考え方は古いと思っていて、どんどん後押ししたいと思っています。
うちの会社を出ていってほしいわけではないですよ。でも、よりハッピーになるステップなら背中を押したいです。
ロゴをご覧になればわかると思いますが、会社は箱、大事なのは中身である「人」です。ストリートスマートは、人が成長していく機会を作っている意味ではコミットしています。ゴリゴリのスタートアップ企業でもないし、かといって大手企業とも違う、ちょうど中間くらいの企業です。
ーー高藤
ティール組織(※)ではない、という感じですか?
※ティール組織とは
フレデリック・ラルーによるマネジメント手法の考え方。以下のように色を使い組織を5つに分類している。
・レッド(支配的なマネジメント:狼の群れ)
・アンバー(厳格な役割分担:軍隊的)
・オレンジ(ヒエラルキーは存在するが成果で昇進できる:機械的)
・グリーン(主体性を発揮しやすく多様性が尊重されやすい:家族的)
・ティール(上司や部下といったヒエラルキーや指示系統はなく目的を実現するために全員が共鳴して動く:生命体)
参考:ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現/フレデリック・ラルー著
ーー松林社長
ティールではないですね。グリーンかな。
過去に一度、ティール的なチャレンジで役職をなくそうと僕が提案したことはあります。でもそれはうまくいかなかった。かといってオレンジみたいな感じでもない。グリーンですね。
ーー高藤
なんだかオーガニック感というか、組織として社員を型にはめるのではなく、一人一人が生き生きとした集合体、生物のような組織だという印象を受けています。そして、やめている人は少ないけど、成長して出ていくことにも否定的ではない。
ーー松林社長
変化に強い会社でありたいし、それは人の可能性でもあります。
社員を大切にしたいんです。だから、もしうちで働いていても、成長するフェーズであれば、会社都合で抑えることはしません。そもそも会社が魅力的であれば、戻ってくる人もいるでしょう。
たとえば、出産や育児で休んだり、退職したりする。でも、やがてストリートスマートに戻ってくる。制度ありきではなくて、そうやって自然と戻ってきやすい、働きやすい環境がどんどんできあがって、勝手に制度ができあがるくらいだといいなと思います。
ーー高藤
本当に、松林社長のお話は興味深いことばかりです。これまでの組織の在り方や、働き方の常識を変えていく、そういうチャレンジに関心がある方は増えているのではないでしょうか。
ぜひ、ストリートスマートさんでそうした挑戦をしてみたい方は、ぜひお気軽にご連絡を頂けたらと思います。本日はどうもありがとうございました!
文・編集/大橋 礼
■プロフィール■
松林 大輔
株式会社ストリートスマート代表取締役
大阪府生まれ。20歳の時に独立を決意し、経営を学ぶためベンチャー企業へ入社。20代半ばで役員へ昇格し、140名近い営業部隊を統括する。
2009年9月にストリートスマートを創業。「ひとりひとりが活躍し、仕事を歓びに変えられる人を1人でも多く増やす」をミッションに、企業や教育機関へクラウドツールの導入支援を行う。
2016年、働き方を選択できる社会づくりを目指して一般社団法人at Will Workを設立、代表理事に就任。世の中に働き方の選択肢を増やすため、カンファレンスやアワードの開催など、さまざまな活動を展開中。