『「わかりあえない」を越える』を読む前に

2021.12.22 お知らせ

COOのFです。

NVC(Non Violent Communication)の提唱者であるマーシャル・B・ローゼンバーグの著書であり、僕のNVCの先生の今井麻希子さんも翻訳に加わった『「わかりあえない」を越える』が手元に届きました。

既に読んだNVCを学ぶ仲間からの評判も高いので、この新著を読むことで自身の内面にどんなことが起きるのか楽しみです。その楽しみな気持ちを一旦抑えて、読む前に、自分の中の「わかりあえない」への対峙について考えてみたいと思います。

NVCはコミュニケーション手法として、素晴らしいものであると、なるべく多くの人が体得の程度の差こそあれ、生涯をかけて探求する価値のあるものだと僕は思っています。NVCの普及は人類が未だ到達できていない穏やかな世界へ私達を導いてくれると信じています。

さんざん、NVCを持ち上げておきながらですが、なかなか‘‘普及’’のハードルは高そうです。詳細には触れませんが多くの人にとっては、「そんなことめんどくさくてやってられない」とデスクトップのゴミ箱にでも捨てるようにスルーされるものだと思います。それ故、普及に尽力されている方には頭が下がる思いです。

今回は組織内のコミュニケーションに限定して話を展開します。

企業の規模が大きくなればなるほど、従業員が担う業務が細分化しており、プロジェクトを主導しようとすると様々な人を巻き込み物事を進めなければなりません。

様々な人を巻き込むということは、様々な価値観や認識の人を巻き込むということです。組織には色んな人がいます。仕事への向き合い方も様々です。自分さえよければ、自分の部署さえよければ、自分の会社さえよければ、社外パートナーにとっても社会にとってもAll Winな状態になって欲しい等、見ている範囲が異なります。

ここに時間軸も加わります。短期〜長期。会社の理念、Mission、Values、Purposeの浸透度は、見ている範囲と考える時間軸が従業員と会社で如何に整合性が取れているか一つの判断基準になると個人的には思います。社員の見ている範囲がバラバラだったり、時間軸がズレまくっていると物事を進める時のコミュニケーションコストが膨大になります。

このことをよく分かっている企業は、採用や人材・組織開発などの人事戦略のベースに理念などがしっかりと横たわり、更に従業員への浸透のために不断の努力がなされていますし、それ相応の評価、報酬システム(何を評価して何を評価しないか、何に報酬を与えるか)になっているのでしょう。いわゆる、Purpose経営というやつですかね。

ただ、日本のいわゆる大企業では、理念、Mission、Values、Purposeの浸透が不十分故、コミュニケーションコストを膨大に費やさざるを得ない状況が多発していると思います。これは、日本特有の‘‘解雇が出来ないこと’’ ‘‘年功序列制度’’ ‘‘組合制度’’などが複合的に絡み合って生じている現象だと思っています。仕事を頑張らなくても、そこそこ給料がもらえてしまうシステムに欠陥があるので、頑張らない人を責めるのは御門違いなのかもしれません。(と最近はようやく考えられるようになってきました。)とはいえ、自分が主導するプロジェクトを前に進めるためには、頑張らない人にも少しは頑張ってもらわないといけません。

ですので、相手によってコミュニケーション方法を変えることが必要です。自分軸で考える人に、All Winを目指しましょう!と言ったところで、響く訳がありません。見ている世界が違うのですから。そういう人には敢えて「いやーこの仕事、面倒くさいですよね。僕も仕方なくやってまして。でも、○日までにやらきゃ部長に怒られるんで、何とか僕の我がままを聞いてくれませんか?」という風に言うと、「まぁしゃーないか。」等と動いてくれることが割とあります。

大切なのは、‘‘あるべき論’’をぶつけないことかなと。

上記のようなコミュニケーションは不本意ではありますが、誰かがやらないと物事が進まないですからね。

社内営業、社内政治がくだらないと揶揄する人もいますが、組織に勤めている以上、そこからは逃れられないことがほとんどかと思います。どうしても、嫌ならフィールドを変えましょう。

心では「わかりあえない」状況であったとしても、物事を進めなければいけない状況もありますし、及第点をもらえる妥協点を見つけることは可能です。むしろ、理念等が浸透仕切っていない、且つ人事制度も旧態依然とした企業だからこそ、楽しめるエンタメじゃないかなとすら最近は思っています。とはいえ、コミュニケーションコストは組織の生産性を著しく毀損するので、何とかしなきゃしなきゃいけないんでしょうね。

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