最後のフロンティア

2023.12.18 お知らせ

「世界は成熟し宇宙やメタバースにしか未知が残されていないように思えるが、本当のフロンティアは人間の中にある。」

今年、最も僕の胸を刺した文章だ。

この文章に出会った瞬間、その時は確か、地方のマイナー路線の人がほとんどいない駅で電車を待っていたのだけど、狂ったような高揚感が押し寄せてきた。

ここ数年、考えてきたこと、向き合ってきたことを、この文章がカタルシスに導いてくれた。
明快な文章であり、その通りだと思う。

人間の中(内面)にはまだまだ未開拓領域が残されている。人間の内面を開拓する対象と認識することは、人生をより味わい深いものにしてくれるだろう。

多くの人は、自分が自分を理解している度合いを過大に評価している。

簡単に、「自分は〇〇という人間です。」と言い、一見、利他的な行動をする人に対して、「それって本当は自分が良く思われたいだけじゃないの?」と質問すると、「いえ、そんなことはないです。」と返す刀が飛んでくる。人間はそんなに簡単で割り切れる生き物じゃない。

「人を殺めた後に、見知らぬ人が川に溺れていたらその人を助けてしまう。人間ってそういうもの。」
リリー・フランキーが言っていた。

内側に矛盾と偏愛を抱える歪な存在、それが人間だ。
にもかかわらず、多くの人が自分や他者のことを分かったような態度をとる。さらに、自分の中に一貫性がないことに絶望したり、理解出来ない他者を遠ざける。

このことは、人と人が心からつながることの障壁になる。この障壁を取り除くには、“評価の態度”から“観察の態度”に切り替えることが有益である。

人は人のことを評価し過ぎである。正しいと間違い、善と悪、もういい加減、そういったものは卒業した方が良い。フラットな目で自分と他者を観察する。その上で、内面に息づくものに思いを馳せる。

この態度により、洞察力が磨かれる。自身と他者の無意識領域に踏み込むことが可能になる。これが内面の開拓のプロトコルである。

一人でも多くの人がこの態度で生きることは、様々な差別や偏見、それらに伴う痛みからの解放に貢献する。

差別や偏見をなくしましょう。そんな標語のようなものでは、(評価を根底とした)差別や偏見はなくならないと思う。

人は「〇〇をしないこと」は出来ないのである。

大切な人のことを思い浮かべないでください、餃子の王将の天津飯のことを考えないで下さい、どうだろうか?

極端な例で多少の飛躍はあるかもしれないが、差別をしない、偏見を持たない、と言語で認識した瞬間、そこには、差別や偏見の意識が残っているような気がする。

評価しない、差別をしない、偏見を持たない、ではなく、“フラットな目で(もっと言うと、興味・関心を持って)観察する”これを取りたい行動の目標と置くのがよい。

冒頭で紹介した文章に根付く価値観がこの行動を後押ししてくれる。

「人の内面には未知の領域が多く残されている。開拓するには相当の努力を要する。努力を要するがこの開拓こそが至上のエンターテインメント。」

この共通認識を一人でも多くの人が持つことが出来れば、世界はもっと楽しくなる。

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