対談「ビジネスの力で社会を良くするには」~前編~
2021.06.11 お知らせSDGsや社会課題に取り組む企業と、そのような企業での仕事を希望するハイクラス人材・リーダー人材を繋げるサービス「GreenGreenキャリアプラットフォーム」がスタートしました。
5月12日には立ち上げを記念し「ビジネスの力で社会を良くするには」をテーマに、ZENKIGEN代表取締役CEO 野澤 比日樹さんとライフイズテック株式会社取締役 讃井 康智さんのおふたかたをお招きし、クラブハウスでトークイベントを開催しました。
「社会的意義を感じられる仕事を求めている」
「やりがいのある仕事に就きたい」
と思っている方。
「転職を漠然と考えているけれど、会社の知名度や年収だけで転職先を探すのは違和感がある」
そんなモヤっとしたものを抱えている方!
社会課題の解決と企業の改革へ情熱をそそぐ、おふたかたの熱いトークがあなたの気持ちに新しい風を吹き込むかもしれません。後半ではライフイズテック、ZENKIGENの社内の雰囲気について、また求める人材像や転職に関するアドバイスも飛び出しました。ぜひ、ご覧ください。
◆ソーシャルベンチャー企業とは
ソーシャルベンチャー企業とは、ビジネスを通じて社会課題の解決や貢献をする企業のこと。事業で収益・利益を確保しながら社会貢献を継続して課題解決に取り組む。ライフイズテック・ZENKIGENも革新的でチャレンジングなソーシャルベンチャー企業。
・なぜソーシャルグッドな企業を始めたのか
―高藤
今回は熱いおふたりの経営者対談ということで、まず、なぜ起業しようとしたのかお伺いできますでしょうか?
―讃井
僕は起業というか創業者チームに加勢したひとりです。2010年当時、iPhone発売から3年ほどたち、さまざまなIT起業が名乗りをあげる中でITの時計の針がピタリと止まっているところがある、それが教育現場でした。
小学生や中高生がプログラミングやITに触れる場がなかったんです。僕自身、メディアアートをやりたいと高校のときに思ったけど、学びようがなくてあきらめた経験があります。
子ども達にとってよいもの、学びの場を作りたいという、ただその思いに突き動かされてライフイズテックの創業に携わりました。
―野澤
僕はインテリジェンス(現パーソルキャリア)から創業期のサイバーエージェントを経てソフトバンクへ、仕事内容もいろいろと変わっているんですが、ひとつ自分の中に芯があります。
それは次世代のために自分の人生を使おうという使命です。
ある調査によると、熱意をもって仕事をしている人は日本ではわずか6%、たった6%ですよ。
そんな世の中では、子どもが大人になって仕事をすることに夢も希望も持てないじゃないですか。それが事業を立ち上げた思いの根底にあります。
会社名のZENKIGENは「全機現」からきています。意味は人が持つ能力を発揮すること、人生でもっとも長く時間を使う仕事でみんなが力を発揮して、子ども達がおとなになることに夢や希望が持てるような幸せな社会を作っていきたいと思っています。
◆ソーシャルグッドとビジネススケール
きちんと利益をあげ会社として成長しながら、社会への貢献を同じ熱量で向き合う「ソーシャルグッド企業」。「会社を経営することと社会貢献のバランス」について、おふたかたの話もヒートアップしていきます!
・ソーシャルインパクトのある会社が評価されつつある
―高藤
おふたかたとも、社会に対する熱い思いをもって企業運営を考えていらっしゃるわけですが、企業を拡大する時期に投資家などから、そんなことより売上を増やせといった意見や圧力のようなものはなかったのでしょうか。
―讃井
むしろ逆です。今は、もちろん利益もですが、ソーシャルインパクトを評価する流れになっています。
ブラックロック(世界最大級の資産運用会社)は、それこそ利益にフォーカスしていたけど、今は社会にインパクトを与えるような慈善を目的とした投資を拡大しているわけですから。
―野澤
そうですね、資金調達という場面で、たとえばKPI(重要業績評価指数)の話しかしない人とか、数字だけで会話する人はどうかなって思いますし、実際に僕はその場で席を立って去ったこともあります。
―讃井
今、本当にソーシャルグッドで、しかもビジネススケールを出せるようになっている。そういう会社が評価されています。転職を考えている人にも広く知ってほしいなと思います。
◆論語と算盤「ソーシャルグッド企業のあり方」
「利潤と道徳を調和させる」という経済人がなすべき道を示した『論語と算盤』(出典:BOOKデータベース)渋沢栄一による著書で、現在もビジネス書として愛読されている。イベントでは「論語とそろばん」から、ソーシャルグッド企業のあり方について話が広がりました。
・社会へ貢献しながら利益も確保する
―高藤
未来に対する悲観論もたくさんありますが、おふたかたのような会社がちゃんと伸びていると知るだけでも心強く感じます。
―野澤
社会貢献をしても、結果的に会社がつぶれたらダメです。
論語とそろばん、ですね。
社会課題に向き合いながら、利益は利益としてきちんと成果を出していく。そして利益を社会に還元する、そういう会社が増えれば世の中が変わっていくのではと考え、本気で向き合っています。
―讃井
論語とそろばん、まさにそうです。利益と社会貢献の両立です。
ソーシャルベンチャーはゴリゴリに利益重視でやっている会社と比べて成長できないみたいに見られることもあるんですが、違いますよ。
難しいことですが、社会への貢献と会社の利益と両方に向き合っている会社は成長するし、その中で働くことは、やり甲斐もあると思います。
◆ハイキャリア人材の転職事情とは
いわゆるハイクラス転職、ハイキャリア人材は一定以上の年収を得ているなかで「これでいいのか」と新しいキャリアパスを描こうとしているケースが増えています。実際にソーシャルベンチャー企業として成功しているZENKIGENとライフイズテックの経営者視点から、社員への思いや人材登用について語っていただきました。
・次世代のためにより良い社会を残していきたい
―高藤
新型コロナウイルス感染症があり、考え方が変化した方も多いと感じますが、いかがでしょうか。
―野澤
お金を儲けるのは二の次で、どんな社会イシュー(課題)に関わるかといったことを考えるようになった若い人が増えていますよね。
―讃井
学生のうちから起業していたりNPOなどの取り組みをしていたり、社会課題、イシューについて考えてアクションをとれる若い子が増えているんですね。
いわゆる上場企業とか会社名で就活するという時代から、イシューでなにをやるかと考えて仕事を決める若手が、今後はもっと増えてくるのではないでしょうか。
―高藤
同じように「大手だから、年収がいいから」といった条件だけでなく、転職でも「働く意義」や「社会のためになることに関与したい」といった自分の思いを重視して転職先を探している人が増えていると感じています。
そうした人材とソーシャルグッドな企業がGreenGreenのプラットフォームでつながるといいなと本当に願っているところです。
―讃井
うちの会社ですと、平均年齢35歳前後ですが、パパママ社員が増えてきています。
彼らに聞くと、子どもが生まれて、この子たちが生きる世界をより良いものとしたい、年収だけがすべてではなく、社会をよくしたいという想いで仕事へのやり甲斐を感じていると言っています。
―高藤
社会を良くしたいという思いが高まり、ソーシャルグッドな会社への転職を考え始めている人は実はけっこう多いのかもしれないですね。
◆Green Greenは新しい進路指導だ!
きちんと利益をあげながら社会貢献をつづけるソーシャルグッドな企業と、スキルや知識、熱意がありキャリアと社会性を両立させたいリーダー人材・ハイキャリア人材をつなげる新しいプラットフォーム「GreenGreen」。企業側はどう見ているのか、そしてどんな人材を求めているのか、転職を検討している方必見です!
・求める人材像とは
―高藤
会社としては、どういった人材を求めていますか?
―讃井
僕らのような企業は、ビジョンがマッチしている人材を探すのが難しい。同じような温度感で一緒になって仕事に取り組める人はなかなか簡単に見つかりません。
高藤さんが、ステータスとかお給料といった外的な〝ものさし〟より、転職を考えている人たちがどう生きたいかを見抜き、判断し、心に響くような仕事をしたい人たちを見つけて、僕らに紹介してくれていることはとても大きいですよ。
―高藤
ありがとうございます。GreenGreenもそうですが、ビジョンに加えて世界観とか、性格なども踏まえて、いわゆるリーダー人材と良い企業とのマッチング、橋渡しができたらというのが願いです。
―讃井
転職エージェントの役割も変わっていくと思うんですよ。
条件だけでなく、カルチャーのマッチングというのかな。ちょっと言い方には語弊があるかもしれないけど、新しい進路指導だと僕は思っています。
―高藤
進路指導ですか!?
―讃井
僕が教育畑にいるからかもしれないけど、進路指導という言葉が浮かびました。
同じ会社、同じ知り合いの環境に慣れてしまうと、他の世界を知ることがなくなってしまう。
でもGreenGreenのようなエージェントがあって、もっとこんな仕事がある、そんな意欲や希望があるならマッチするカルチャーの会社があると、新しい進路を紹介してくれる。僕はそれも教育のように捉えています。
―高藤
そう言われると恐縮ですが、なるほどとも思います。
―野澤
僕のところにも高藤さんから紹介をうけて、有名な大手企業から転職してきた20代がいるんですよ。
大きな会社からの転職ですけど、とてもいきいきとして頑張っています。
早めに出てよかった、もしかしたらもっと年齢があがっていたら、なかなか出ていけなかったかもしれないと言っていました。
先ほどの讃井さんのお話にあったように、環境に慣れきってしまうと、もっと他にあるかもしれない価値観に気づけないんですね。
―讃井
ライフイズテックのスクールで保護者の方から言われたのですが、学校以外のところで新しい価値を見せてくれたことに感謝している、と。
転職も同じかなと思います。
今いる会社、よく会っている友人と話していても、別のところに新しい価値があることになかなか気づけない。
そういう面で、高藤さんが始めたソーシャルグッドに特化した転職エージェントというのは大きいですよ。ロールモデルがいるから、高藤さんのところで話をすれば、こういう道もある、こういう価値の見出し方もあると気づける。
―高藤
たいへん勇気づけられます。
・実際に人材を採用するとき
―高藤
もう少し具体的な話として、現在、御社でこのポジションの人材を探しているというのはありますか?
―讃井
学校系の教材が広まっているので、法人セールスとかカスタマーサービスの分野ですね。あとはDX人材、商品設計をして新規事業を牽引してくれるような人です。
ちなみにうちは教育関係から来る人は2割程度で、他は前職などいろいろです。共通しているのは、課題解決に向き合ったスキルのある人ですね。
―野澤
僕のところは、人事系のプロダクトの分野と事業開発でも人を募集しています。
加えてAIサイエンティストやAIエンジニアですが、これは本当になかなかいないんです。良い方がいたら今すぐでも会いたいです!
―高藤
では、人材を採用するときには、どの辺をご覧になっていますか?
―讃井
まず見るのは、事業や社会課題に対する思いを持っているかどうか。ベクトルが外向きの人ですね。自分ではなく他者に、外側に思いや考えが向いている人。
いっぽうで高いスキルが求められているのも事実です。カルチャーが第一だけど、高いスキルも必要です。
―野澤
一番重要視しているのは自己肯定感があるかどうか、ですね。
自分に自信がない人が上に立つと、逆に無意味に高圧的になるのを見てきました。もはやピラミッド型で仕事をする時代ではない、極力フラットな組織にしています。
ですから、右向け右ではなく、人間性が高く、自己肯定感のある人を採用します。
―高藤
自己肯定感を面接の中でどう見極めているのでしょう?
―野澤
自分なりに見ているんですけど、そこは教育学の専門家である讃井さんにお伺いしたいですね。
―讃井
自己肯定感は、正直に言うと、育ちとか周囲にその人を愛してくれた人がいたかどうか、によるところはあるとは思います。
外へ向けての貢献実感があるかどうか、自己効力感が持てるかどうか。そうしたことも自己肯定感につながるでしょうしね。だから外へベクトルを持つのが大事なところなんですね。
―高藤
自己肯定感や自己効力感ですか?
―讃井
そうです。もっと簡単に言うと愛です。愛された経験が自己肯定感を伸ばすと考えると、愛の力は大きいですよ。
人とかテーマに対して愛を持てるってすごいことじゃないですか。
熱狂とか、パッションのある人、違う言い方をするとロックかな(笑)
―高藤
愛ですか!うーん、確かに愛って、人類とか社会に対する愛も含めて大きな意味をもちますね。
前編はここまでです。後編はこちらからお楽しみください!
■プロフィール■
ゲストスピーカー
ZENKIGEN代表取締役CEO 野澤 比日樹
1998年株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)新卒入社、1999年に創業期のサイバーエージェントに入社、事業責任者として当時最短で営業利益1億円を突破。2011年にはソフトバンクアカデミアに外部1期生として参加、孫正義会長から声がかかりソフトバンクグループ社長室に入社。その後2017年株式会社ZENKIGENを創業。伊藤忠商事やソフトバンクなど大手企業450社以上の採用DXを支援、独自AIエンジンの開発にも取り組み、人とAIが調和した誰もが全機現できる社会の実現をめざす。
ライフイズテック株式会社取締役 讃井 康智
東京大学教育学部卒業後、リンクアンドモチベーションでのコンサルタント勤務を経て東京大学教育学研究科にて博士課程まで在籍。専門は教育政策・学習科学。全国の学校や保育園での協調的・創造的な学びづくりを支援。2010年にライフイズテックを創業。中高生向けIT教育サービスでは世界2位まで成長。学校向け教材などオンライン教材も提供している。現在は各地の教育委員会の専門委員やNewsPicksのプロピッカー(教育領域)も務める。
GreenGreen運営
プロビティ・グローバルサーチ株式会社代表取締役 高藤 悠子
大学卒業後、メーカーの海外営業を経てMBA人材・コンサルティングファームの人材に特化した人材エージェントに勤務。その後タイでJACリクルートメントタイランドの執行役員として事業拡大をしたのち、帰国しプロビティ・グローバルサーチ株式会社を設立。「よい会社によい人材を繋ぎ、よりよい社会の実現を」をモットーに、ソーシャルグッド・SDGs志向の企業とリーダー人材をつなげる人材エージェントを経営。東京都女性ベンチャー成長促進事業APT Women第5期選出。
イベントリポート/大橋 礼