腐るお金(後編)

2021.10.11 マガジン

この記事は「腐るお金(前編)」からの続きです。

では、このお金が人を魅了する力の所以は何か?

それは‘‘貯められる‘‘という機能に帰結するのではないでしょうか。
貯められるが故に、「もっと欲しい、一旦貯めたものを手放すのが怖い。」という感情に苛まれるのだと思います。

先ほど、貧富の差と書きましたが、貧富の差が生じるメカニズムについても触れたいと思います。

お金は貯められるという機能の他に、放っておくと増える(利子がついたり、運用益が出たり)という機能も持っています。世界で運用されているお金は年間4%ずつ増えていると言われています。一方、労働により得られる収入は年間1%ずつしか増えません。

お金を運用出来る人はつまり、お金が余っている人ですね。
お金が余っていない人も、生きていくためには日々の衣食住を確保しないといけませんから、放っておけば増えるはずのお金と、手にした瞬間から価値の下がる(腐る)ものを交換せざるをえないのです。
そりゃ、持つものと持たざるものの間で格差は拡大し続けますよね。

このように、お金に‘‘貯められる(且つ放っておくと勝手に増える)‘‘という機能があるが故に様々な副作用が生じてしまうのです。

そこに対処するためにeumoは腐る(発行から3ヶ月で期限が切れる)という機能がついています。
新井さん曰く、eumoはリハビリツールであると。
その心は、お金の(貯められるが故の)魅力に取りつかれて、豊かさを犠牲にしてしまっている我々に、改めてお金の使い方を教えてくれるツールなのです。(だって、貯められないのですから、これはもはや、お金の豊かな使い方養成ギブスですよね。大丈夫です。新井さんはちゃぶ台をひっくり返したりはしません。)

また、もう一つの大事な機能がeumoには備わっています。それは、支払いの時に、GIFTする機能(定価にeumoを上乗せして支払う機能)がデフォルトで付いていることです。

お金のもう一つの副作用として、定価設定が我々の価値判断に相当影響を与えていると思います。
ワインに目がない人は、何十万円、時には何百万円も払ってシャトー何とかという高級ワインを飲むのでしょうが、僕は仮に「今日はシャトー何とかのボトルが5万円で飲めます。」と言われてもおそらく飲まないでしょう。ですが、僕の好きなウルトラマラソン(100㎞を走るなかで応援の方の温かさに触れることが出来ます。)、今は旅費も併せて10万円も出せば出場出来ますが、これが、仮に30万円くらいになったとしても1年に1回くらいは出場すると思います。(マラソンをしない人からすると、そんなに払って苦しい思いをするなんで信じられない、と思われるでしょうね。)

少し極端な例かもしれませんが、これだけ人の価値観は多様であるにも関わらず、お金で表現出来うる価値(定価)が、多くの人の価値観(損とか得とか)に影響を与えている、つまり価値観を画一化してしまっているような気がします。

価値観が画一化された社会は豊かな社会とは言えませんよね。
eumoにGIFT機能があることで、自分が応援したいと思ったお店には、定価より多く支払うことが出来るので、これは、人間の価値観の多様性を尊重することにも寄与すると思います。

このように、eumoはお金の副作用によって大切なものを見失っている我々に、豊かさを取り戻させてくれる通貨なのです。それも、使えば使うほどに。