喜多見幸太に見るリーダーシップ
2021.08.30 マガジンCOOのFです。
最近、TBS日曜劇場の‘‘TOKYO MER‘‘という医療ドラマにハマっております。
MERとは、Mobile Emergency Roomの略で、移動式の救急救命室が事故・災害・事件の現場に駆けつけ、その場で救命措置を行うための組織です。
‘‘(患者が病院へ到着するのを)待っていては救えない命がある‘‘がコンセプトとなっています。
鈴木亮平さんが演じる、MERのチーフDr喜多見幸太のリーダーシップが素晴らしく、そして美しいのです。このことが多くの人の心を惹きつけているのだと思います。このドラマでは医療者側にとっても危険と隣り合わせの現場に赴く場面が多いのですが、彼は自ら率先して、危険な場に身を晒します。そして、いつも卓越した医療技術と仲間の助けのお陰で、一人の死者も出すことなく救命作業を完遂します。
一見、無謀とも言える行動に、厚労省の役人やレスキュー隊、警察官などから批判の声を浴びることもあるのですが、徐々に周囲も彼の、‘‘人の命を助けたいという想いからくる愚直な姿勢‘‘に心を惹かれていくのです。
彼の姿は、2年前にアフガニスタンで凶弾に倒れた医師の中村哲さんとも重なるところがあるように思います。中村哲さんも、現場で危険を顧みず、現地の方々と一緒に井戸を掘っていたというエピソードがあります。また、彼のコミュニケーションに注目すると、NVC(Nonviolent Communication:マーシャル・B・ローゼンバーグ博士が体系化した平和的なコミュニケーション手法)の要素を垣間見ることが出来ます。
NVCは以下の4つの要素から成ります。
・観察(observation)
・感情(feeling)
・必要としていること(needs)
・要求(request)
個人的には、‘‘観察‘‘の工程の難易度が高いと思っております。
我々は、日ごろ、‘‘観察‘‘ではなく人を‘‘評価‘‘をしがちです。
例えば、「あなたはいい加減だ。」とかですね。
そう思う背景には事象があるはずですが、その事象の‘‘観察‘‘をすっ飛ばしちゃうのですね。
観察をするとすれば、「あなたは、過去に納期を守らなければいけない機会が5回あったが、そのうち3回納期を守らなかった。」となります。
その後、
「このような対応をされると、自身を軽く扱われているような気分になり、私は悲しい。」(感情)、
「なので、私はあなたに納期を守ってもらうことで、尊重されたい。」(必要としていること)、
「なので、今後は納期を守ってくれませんか?」(要求)
といった風に伝えることをNVCでは推奨されています。
慣れるまでは堅苦しい表現になってしまいますが、自然とこういうコミュニケーションがとれると、平和的な関係が築けそうですね。
さて、喜多見チーフに話を戻すと、彼は、人のことを決して‘‘評価‘‘しません。
厚労省、警視庁など縦割り組織の中で、彼が身動きを取りづらい状況も起こるのですが、決して、人を‘‘評価‘‘せず、自身の感情(幼少期の原体験に由来する、人の命を救いたいという極めて純粋な欲求)に耳を傾け、必要としていることを明確にし、(遠慮することなく)相手に要求することで場を好転させ、人の命を救っていきます。
彼の「邪推はやめましょう。」という言葉が刺さります。(如何に自身が‘日々の生活の中で‘‘邪推(評価)‘‘をしてしまっているか・・・)そして、‘‘彼は相手を変えようとはしません‘‘。自身の純粋な欲求に根差した行動をとり続けることで、周囲が心動かされ、変わっていくのです。
「リーダーシップとは影響力のこと」という有冬典子さんの言葉にも通ずるところがあるように思います。
‘‘相手は変えられない、変えられるのは自分だけ‘‘ということを彼は教えてくれているような気がします。
さて、ドラマも佳境に入ってきました。どのような大団円を迎えるのか、皆さんと一緒に見届けたいものです。